遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書の作成が必要な理由
1 遺産分割協議書の作成は相続手続きの前提となります
結論から申し上げますと、実務上、相続財産の名義変更など、多くの相続に関する手続きは、遺産分割協議書がないと進めることができません。
遺産分割協議書は、実務においては、相続人全員が署名と実印での押印をし、相続人全員の印鑑証明書を添付します。
なお、法律上は、遺産分割協議書の作成は義務ではありません。
遺産分割協議書が必要とされる具体的な場面としては、預貯金・有価証券の解約や名義変更、不動産の相続登記、相続税の申告・納付が挙げられます。
以下、それぞれについて詳しく説明します。
2 預貯金・有価証券の解約や名義変更
被相続人の預貯金や、株式・投資信託などの有価証券の解約、名義変更をする場合には、金融機関で相続手続きを行う必要があります。
相続手続きの際には、被相続人と相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、その他金融機関所定の書類の提出、作成を求められます。
3 不動産の相続登記
被相続人がご自宅等の不動産を相続によって取得した場合には、相続登記を行う必要があります。
相続登記は、令和6年4月1日より義務化されていますので、しっかりと対応することが求められます。
相続登記をする際は、管轄の法務局に、相続登記申請書と遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、被相続人と相続人の戸籍謄本、固定資産評価額証明書等を提出する必要があります。
また、相続で取得した不動産を売却する際にも、相続登記を済ませていることが前提となります。
4 相続税の申告・納付
相続税申告をする際は、原則として遺産分割協議を終えていることが前提となります。
相続税は、各相続人が取得した相続財産の評価額に対して課される税であるためです。
また、相続税額を大幅に下げることができる可能性のある特例の中には、遺産分割を済ませていることが前提となるものがあります。
相続税減額効果が大きく、多くの相続税申告の際に用いられる、配偶者控除や小規模宅地等の特例の適用は、遺産分割を終えていないと受けることができません。
そして、遺産分割を済ませていることを税務署に示すための資料として、遺産分割協議書の写しが必要となります。