相続人の一人が海外在住の場合、どのように相続手続きを進めるのですか?
相続人が海外在住の場合でも相続できますか?
相続人が海外在住の場合でも遺産を相続することができます。
ただし、日本に住んでいる相続人と同じ手続が必要になります。
具体的には、被相続人が遺言を遺していなかった場合、原則として相続人全員で遺産分割協議をして、遺産分割協議書を作成する必要があります。
遺産分割協議書には実印を押して、印鑑証明書が必要になると聞きましたが、海外には印鑑証明書がありません。どうすればよいでしょうか?
海外在住の相続人は、現地の大使館や領事館などの在外公館で「サイン証明」を受けることで、印鑑証明書に代えることができます。
このサイン証明には、単独型と貼付型の2種類あります。
遺産分割協議書を作成する場合、貼付型を求められることが多いようですが、手続によって異なる場合もあるので、先に法務局や金融機関に確認しておくとよいでしょう。
また、海外在住の相続人で日本の住民票がない場合は、代わりに在留証明書を取得することになります。
在留証明は、サイン証明と同様に現地の大使館や領事館などの在外公館で発行されます。
相続税はどのような財産にかかりますか?
相続税とは、原則として亡くなった時点における被相続人の相続財産に対して課税されるもので、相続により財産を取得した場合に、その取得した相続財産に課される税のことをいいます。
相続税は、相続財産の総額の多寡で税額が決まるため、相続財産が少ないほうが、相続税の金額が少なくなるという制度になっています。
つまり、課税対象になる相続財産の評価総額が減れば、相続税額が減るという関係にあるということです。
海外に相続財産がある場合でも相続税はかかりますか?
被相続人の財産が海外にある場合、その財産に対して、日本での相続税に加えて、外国でも相続税が課されるケースがあります。
そうすると、海外にある財産に対して、当該財産がある外国の相続税と日本の相続税とを二重に納めなければならず不合理な結果になりかねません。
このような不合理な事態を避けるために、日本の相続税では「外国税額控除」という特例が設けられており、この二重課税を回避する制度が設けられています。
外国税額控除とはどのようなものでしょうか?
外国で相続税を納めた場合、その外国で納めた相続税額を上限として、日本の相続税から控除することができる制度です。
①外国で支払った相続税額か、②日本での相続税額×(外国にある相続財産額合計/相続人の相続財産額合計)のいずれか少ない方の金額を相続税から控除できることになっています。
外国税額控除の適用要件にはどのようなものがありますか?
相続税の外国税額控除の適用を受けるには、①相続または遺贈によって日本国外の財産を取得した者であり、かつ、②日本国外の財産についてその外国で相続税が課された者であることが必要です。
他方、被相続人と相続人が両方とも10年を超えて外国に住んでいる場合は、外国の財産には日本の相続税がかからないので、外国税額控除の適用はありません。
なお、日本国内にある相続財産については、被相続人と相続人の海外生活の有無・期間に関わらず、日本の相続税がかかるので注意が必要です。
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